7 私の クルニュー国立中世美術館  

 

説明は、−JTB 街物語 パリ−に拠った。

この美術館のあるところは、パリでもシテ島に次いで古い歴史を持っているところだ。道を挟んでソルボンヌ大学と隣り合っている。3世紀にはローマ人達が住んでいて、館内には当時の共同浴場の遺構も見られる。この美術館の建物は、15世紀末に建てられた。館内の収蔵品は19世紀にアレクサンドル・デュ・ソムラールという収集家が、生涯をかけて集めた中世の美術品の数々である。

ヨーロッパでも類い希な、素晴らしいコレクションだ。中でも見逃せないのは「貴婦人と一角獣」のタビスリーである。ノートルダム寺院のポルタイユ彫刻、ゴシック礼拝堂、そしてエナメルと黄金の宝物類も、この美術館の傑作だ。

 

  その1 タピスリー

この6枚組のタピスリーは、15世紀末ごろリヨン出身のル・ヴィスト家の注文でパリの画家が下絵を描き、ブリュッセルで制作された。後にプロスペル・メリメ、ジョルジュ・サンドによってブーサックの城館で発見、紹介され、1883年からこの美術館で展示されるようになった。6枚のうち5枚の図柄は、それぞれ人間の五感の寓意を示す。問題は6枚目の「わがただ一つの望みに」と題されたタピスリーの持つ寓意だ。

 

「貴婦人と一角獣−わがただ一つの望みに−」

首飾りをつけていない貴婦人の動作が、宝石を箱から取り出しているのか、箱に収めているのかが問題。古記録によると6枚目は(下の写真5枚に続いている)「自由意志」を示す。宝石を取り出すのなら、自由に五感の喜びを味わうための序曲の意味があり、収めているなら五感の情念を超えて虚飾を捨てた寓意だという。

 

「視角」

「触覚」と共に侍女がいない図柄。獅子はル・ヴィスト家の紋章の入った旗竿を持ち、一角獣は貴婦人の膝に前脚をかける。その顔が手鏡に映って視角の寓意を持っている。

 

「味覚」

貴婦人は侍女の差し出すボンボンを摘もうとしている。彼女が見ているインコはボンボンを嘴に運んでいるし、手前の猿もボンボンを口に入れるところ。

 

「嗅覚」

中央に立つ貴婦人は侍女が皿に載せて持つカーネーションで花輪を編んでいる。これだけでは分かりにくいが、彼女の右後方にバラの花を盛った籠があり、猿がその一輪の臭いを嗅いでいるところから寓意は明白。

 

「触覚」

貴婦人はル・ヴィスト家の紋章の旗竿を右手で握り、左手で一角獣の角に軽く触れている。画面に配された動物たちが首輪をつけて飼い慣らされているのも特徴的。

 

「聴覚」

貴婦人と侍女の着ている衣装は共に青が鮮やか。寓意は分かりやすい。侍女はオルガンのふいごを動かし、立ち姿の貴婦人は優雅な指のタッチでオルガンを弾いている。

 

「入浴」

1500年頃。「貴婦人の生活」と呼ばれる6枚シリーズのタピスリーの中の一枚。この作品が取り上げた貴婦人の入浴というテーマは、室内の入浴の構図で、後のフォンテーヌブロー派の絵画に引き継がれていく。

 

「読書」

1500年頃。これも「貴人の生活」というタピスリーの中の一枚。野外の椅子に座った貴婦人が男性のレクチャーを受ける。

 

 

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