4 私のルーヴル  14 ポンパドウール婦人の肖像・女性像

 

「ポンパドウール婦人の肖像」

カンタン・ド・ラ・トウール 1755年 紙 パステル 175×128cm

注:婦人の頭から上の四角い枠(2つ)などは、周囲のものが写り込んでいる

ラ・トウールは18世紀フランスで最大のパステル画家であるといえよう。(中略)モデルのポンパドウール婦人の本名はジャンヌ=アントワネット・ポワッソン・ダム・ル・ノルマン・デワール公爵夫人(1721−64)という。(中略)ジャンヌ=アントワネットはやがて財務官や文芸家らの社交界へデビューし、ヴォルテールの知遇も獲得し、パリで最も美しく、教養豊かな婦人として知られるようになる。1745年には、かねて彼女に心を寄せていたルイ15世の寵妾となり、以来ポンパドウール侯爵婦人の称号を与えられたという。

1751年には、ヴェルサイユ宮殿の二階に居室を与えられるが、そこは王の政務室へ通ずる部屋でもあった。王の寵を受けたのは僅か5年だが、晩年も王のよき友人として、特に文芸の支持者(メセヌ)として名声を残し、43歳の時肺の病気で没している。

婦人の肖像を描いた画家は、プーシェを始めとして極めて多い。しかし、デイドロが賞賛しているように、ラ・トウールによる「ポンパドウール婦人の肖像」が最も秀逸であると思われる。(中略)ラ・トウールはパステルという特別な技法で、臆することなく公爵夫人の表情や全身、それに婦人の居室を始め、彼女が織りなし繰り出す、一種の厳しい雰囲気を、素直に写しだしているからでもある。

画面の右上にロココ風の額縁に納まった風俗画が見られる。奥行きを暗示する、その青褐色と赤褐色の人物や風景と対応するのが、左隅に垂れ手前は突き出す、重々しい垂れ幕であろう。椅子が2脚置かれ、明暗の対象を織りなし、後ろの椅子には楽譜とマンドリン、またはリュートのような楽器が、赤褐色の半影の中に沈んでいる。

それらと対照されて、明るい机と分厚い書籍が、右中景で、光をほぼ均等に浴びている。そこにはモンテスキューの「法の精神」は勿論、「百科全書」の第9巻やその他の哲学、文芸書が立てかけられ、さらに明るく青い楽譜を手にした公爵夫人、ルイ15世の愛人が、画面の中で、最も光を浴びて描かれている。髪の先から靴のつま先まで、真珠の光沢と、渋い軽やかな褐色とで彩られている。椅子も、床も、明るく豪華である。

やや右に向けられた顔と瞳、視線は凛然としており、デイドロの語る肉感と生命がこの画面には満ちている。しかもラ・トウールは、やや暗く重い背景の半影部から彩描を始め、不思議に穏やかな淡い真珠色の調和感のなかで、肖像を浮き出させている。−朝日美術鑑賞講座5 18世紀ロココ絵画 近藤 昭−から

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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