4 私のルーヴル  9 グランド・オダリスク

 

「グランド・オダリスク」

ジャン・オーギュスト・ドミニック・アングル 1814年 油彩・画布 91×162cm

アングルの最も有名な作品のひとつ。ナポリ女王、カロリーヌ・ミュラーによる注文。オリエンタリスム趣味と装飾が際だつが、実際はラファエロから、ティツイアーノ、カノーヴァの裸体像に見られるような、古代ギリシャ・ローマのニンフ像の伝統上に位置する。光も影もない滑らかな表面、長くしなやかな形に命を与えるのは、輪郭を縁取るリズミカルな曲線のみ。長すぎる脊椎、ずれた胸の位置は、解剖学的事実が無視されており、ここに時代を超越した抽象芸術への傾向が見える。−別冊太陽 ルーブル美術館−から

 

この女は背中で我々を誘惑している。ある批評家が、この女性は椎骨を3本ほど余計に備えていると非難したというが、或いはそのとおりかもしれない。右腕が流れるように左脚のふくらはぎに達し、その左脚はややふしだらに曲がって右足と絡み合っている。脇の下にまるまるとした乳房が覗いているが、それもかなり不自然に描かれている。さらに下半身、それも臀部が著しく誇張されている。

アングルの発想の泉は女性の官能の源を発見する喜びにある、と語ったのは美術史家ケネス・クラークだが、アングルは輪郭を鮮やかな曲線で、ゆっくりと丹念に描くことで女の肉体と戯れている。この曲線こそが女の官能を最も確かに露呈するからである。(中略)形を歪め、部分と細部や、色彩の転調を誇示するアングルの画法は、一種のマニエリスムの復活を意図したものともいえる。

16世紀フィレンツェの画家プロンツイーノのように歪曲変形(アナモルフォセス)が認められるからである。しかし、それはまたアングルの個性的な資質からも由来している。彼の南仏人としての執着癖、そして尽きることのない女性への肉体賛美も決して見落としてはならない。−朝日美術鑑賞講座6 19世紀近代絵画@ 近藤 昭−から

 

 

 

気分はパリジャントップ     青いドレスの婦人